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2021年は白熱する!? コロナ禍で気づいたメンズ美容戦略

先日、化粧品メーカーの方とオンライン打ち合わせをしていた時、「メンズ美容がからっきし売れないんですよねぇ〜」という話になりました。ビューティ業界では数年前からメンズ美容に本格参入するメーカーが増え、ドラッグストアでも単独コーナーが作られたり、百貨店では男性が商品を購入しにコスメカウンターを訪れるというのも珍しい光景ではなくなりました。

このメンズ美容市場、爆発的なブームになっているかと聞かれると……正直、ビミョー。感度の高い人や若い層では「スキンケアは当たり前」となっていても、まだまだ市場全体の底上げには至っていないのが現実。ブランド担当者や商品開発者は歯がゆい思いをしていることと思います。ですが、この市場はビューティ業界の成長を左右する大事なカテゴリーであることは間違いなく、今後の戦略次第で“化ける”可能性は十分にあり得る、と個人的には思っているんですけど、ね。
そう感じたのも、コロナの影響で「美容の在り方」が大きく変わったからなんです。

 

コロナ禍で気づいた、セルフマネジメントの大切さ

美容業界全体の転換期を迎えたコロナ生活。リモートワークの推進で多くの人が仕事の様式を変えざるを得ない状況になったのですが、そこで気づいたのが「見た目の重要さ」。
オンライン打ち合わせの時は他の人の顔なんてそっちのけで自分の顔ばかり見てしまっていませんか?
「自分の姿を客観的に見ることがなかった」「表情の無い自分の顔が怖い」「相手に自分がどのように見られているか気になる」という声は男性だけでなく、女性も一緒。メイクをする時に鏡越しで自分の顔を見ることがあっても、その顔は「自分の好きな顔」であり、「普段、見られている顔」とは異なるんですよね。私もそのギャップに落ち込んだ一人です。「もっと口角をあげないと!」「前髪はあったほうがいい」「肌は色よりもムラが気になる」など新しい気づきがあり、改めてセルフマネジメントの大切さを実感しました。
これらの対応をする・しないは個人の自由ですが、「やって損することはない」というのが私の自論です。

 

メンズ美容戦略はデジタルを駆使するべし

メンズ美容市場においては「デジタルの普及」が追い風になっているのも事実。D2Cマーケティングが勢いを増し、デジタル市場に詳しい友人いわく、「インフルエンサープロデュースやメディアがOEM会社と組んだオリジナルのコスメが話題になっている」と。コロナ禍でデジタルとビューティの相性が良いのではないか、と感じるほどです。
情報も買い物もデジタルで済ますことが当たり前になりつつある今、コスメを簡単に買える環境が確保できたこと、何と言っても「スマホでポチれる」のはやっぱり便利ですよね。昔から男性とデジタルは相性が良いと言われているため、この戦略はさらに加速されるでしょう。


 

といえども、やっぱり誰かに相談したい!

その一方で、対面販売も根強く残っていて、先日、興味深い話を聞きました。ヘアサロンの入り口近くのディスプレイコーナーに男性用の化粧品があったんです。聞くと「うちは男性のお客さまも多くて『おすすめのスキンケアを教えて欲しい』と聞かれるから、試しに置いてみたら飛ぶように売れるんだよね」と教えてくれました。

「ヘアサロンでメンズコスメ!」とは驚きましたが、よく考えてみると男性にとってこんなに効率の良い場所はないんですよね。髪を切りにくるサイクルは1ヶ月から1ヶ月半程度でコスメの使用量と同じサイクル。しかも、担当美容師に髪と肌の両方のアドバイスを受けられるわけですから、そりゃ買いますよね。

今、ヘアサロンではシャンプーやヘアドライヤー、ヘアアクセサリーなどの商品を取り扱っていて、その売り上げシェアはバカにできないのだとか。メンズコスメとは盲点をつかれた思いはありましたが、この戦略、めちゃくちゃ「アリ」な気がします。セレクトショップにコスメコーナーを設けた当時は「時代も変わったなぁ〜」なんて感じていましたが、今はヘアサロンの時代かぁ〜。
ちなみに1番人気アイテムはテカリを抑える美容液、なのだとか。

アイテムをあれこれ増やすだけでは売れない時代

とは言ってもまだまだハードルは高いメンズ美容。そのハードルは一体何なのか、とメーカーの商品開発者から相談を受けたことがありました。
彼らの独自の調査によると「たくさんのコスメを使いこなせない」「使い方がわからない」「自分に合うコスメがわからない」と言った声が圧倒的に多いといいます(男性はシェービングのお手入れもあるため、ステップをできるだけ簡略化したいという声は頷けますね)。
それからもうひとつ、「お手入れの習慣化」です。朝夜の洗顔後のもう1ステップをスキンケアのルーティンとして習慣化させるのは本当に至難のワザなのだとか。何せ、今までお手入れをしたことがない、という人たちに面倒と思わせない、使い続けて肌の調子がよくなることを実感させなければならないのですから。

このニーズに応えられるコスメなんてあるの? なんて声が聞こえてきそうですが、「ひと手間」が苦にならずお手入れができるコスメ……実は、あるんです。すでに美容カテゴリーの市民権を得ている「オールインワンジェル」は、便利で楽チンという面でも適したアイテム。これひとつで保湿ケアが完成するので、本当のところを言うと作らない手はないんです。

さらに言うと、メンズコスメは「デザイン力」も必要です。それも「化粧品だとわからないようなデザイン」が求められているんです。現に美容感度の高い男性たちが愛用しているコスメブランドのボトルやパッケージは、スタイリッシュでカッコいいインテリアのようなデザイン。ブランド名も小さく控えめだけど、わかっている人にはわかるデザインというのが今の傾向。大きなロゴがドカーンとあるのは、もう時代遅れなんですよね。

最後に若いうちからスキンケア意識が高いと、年相応になった時でもカッコよくいられる、と言うのは本当。シワ・シミの悪目立ちがなく、「若々しく見える」んです。
だから冒頭での「メンズコスメが売れないんだよねぇ〜」という答えはもう少し様子見を。“化ける”のはこれからですから。


美容エディター・ライター
長谷川真弓