Beauty Topic

コロナ生活にトレンドって必要?

以前、この連載でコロナ禍による生活様式の変化について触れたことがありました。マスクによる肌悩みや対処法をテレビをはじめとする各メディアで大々的に特集していましたよね。今は落ち着きを取り戻し、コロナ前の特集・企画へと戻りつつあります。

そんな中、先日、私の友人から「マスク生活はまだ続くし、美容のトレンドを追わないことにした」と連絡がありました。
「確かにそう言いたくなる理由もわからなくないけど」と心の中で思いながら、個人的には市場の動向は知っておきたいし、常に新しいネタをウォッチングしている身としては何か寂しさを感じたのです。
トレンドは本当に必要ない、のでしょうか?

顔の半分をマスクで覆うわけだから、「マスク生活の間はメイクをしない」と言う人が多かったのも事実。でも、「やっぱりメイクは必要」と戻ってくる人も。
ただ、メイクが必要と答えた人たちも、コロナ前の“フルメイク”に戻るのではなく、「オンラインの打ち合わせに合わせて、化粧下地で肌色を均一にしたい」「重視するのは目元だけ。あとは薄めのメイク」「マスクを外す機会もあるので血色感のあるリップを塗りたい」など環境やニーズに応じてメイクにメリハリをつけた感じ。これが意外にも、世の女性たちに受け入れられ、“脱フルメイク”が定着したのです。

「トレンドがないこと」がトレンド!?

 トレンドといえばファッション業界もここ数年、「トレンドを追わない時代」に突入しているそう。つい最近、あるブランドの新商品発表会で隣に座ったモード系ファッション誌のファッションエディターの方と今季のトレンドについて意見交換をしたのですが、その話がとても興味深かったのです。

「海外のショーなどで流行りの色や生地・デザインの提案はあっても、それがマス市場まで落ちるかと言われるとそうでもない。浸透していかないのがここ最近の傾向で、トレンドとはちょっと違う」と。でもこの答え、何となくわかるような気がしませんか?

確かにここ数年、「トレンドがないのがトレンド」と言われることが多く、以前のようなわーっとも盛り上がる、ファッション特有のパワーみたいなものがなくなったような感じがします。追い風になったのがこのコロナ生活。ステイホーム中の断捨離もそうですが、おしゃれはしたいけど、「今、買わなくてもいい」という声をあちこちで聞くようになりました。

そこで台頭したのが限られた服や定番服の着回し術。ミニマリストたちのシンプルなファッションやライフスタイルがSNSで話題になったのも、頷けますよね。

ビューティのトレンドはどうなっているの?

一方で、ビューティのトレンドはどうなっているのかというと、個人的に感じた一番の変化は、色の提案。
春はくすみピンク、秋はボルドーやブラウンレッドなどシーズン毎にトレンドカラーを発信していたのですが、今は一年を通じたロングスパンに。くすみピンクは春だけでなく、夏も秋も店頭に残るようになりました。リリースされたばかりの冬コフレにもくすみピンクのアイシャドウパレットも!(しかも、それがすごくかわいいんです)

ON・OFF問わず使えるブラウンは、このコロナ禍でひとり勝ち。ブラウンのアイカラーは相変わらず人気だし、マスカラやアイライナーにおいてはブラックよりもブラウンの販売シェアが伸びて、とうとう逆転したそう。

若い世代を中心に購入者が増えているリップにも変化の兆しが現れています。オレンジカラーが一息つき、最近は「これってブラウン? レッド? それともオレンジ?」と、どの色にも当てはまりそうなリップがヒットしています。

メイクのHowtoについては「コレ!」といった提案がない時代。“ハネ”のようなインパクトのあるアイラインや囲み目メイクもない。眉はまっすぐ太眉からゆるやかなアーチ型へ変わったけど基本は変わりません。高度なテクニックやワザは必要なし、というのが“今”なんです。

これがトレンドだと言う人もいますが、個人的には物足りなさを感じています。ライター仲間も「象徴となる“顔”がなく、逆をいえば“何でもアリ”ってことだから、企画を立てるのが本当に大変」とボヤいていました。

トレンドの変わりに求められているのは?

そんな中、じわじわと人気が上がっているのが「今、あなたに必要なのはコレ!」ネタ。お悩み解決ネタともちょっと違う、「知っているようで知らなかった」「これを使うと便利」「今までと違う仕上がりになる」などといった、手持ちのアイテムやテクニックにほんの少しプラスする提案。
ワンパターン化してしまったアイテムやテクニックに「こうすればもっと良くなるよ」と提案するだけ。この「発想の転換」というのが、まさに今っぽいですよね。ホームランじゃなくて、バントヒットみたいな感じ。ちっちゃな提案が誰かの心を動かし、参考にしてくれたらそれで良し。

実際、商品をひとつプラスするだけならお財布の負担も少ないですし、それでメイクの仕上がりも上がれば一石二鳥。「教えてもらって得しちゃった」くらいの気軽さが、今の時代に合っているのかもしれませんね。


美容エディター・ライター
長谷川真弓